6660.FRB資産、日欧中銀を一気に抜く

FRB資産、1カ月で1.6兆ドル増 日欧中銀を一気に抜く

日経新聞 2020/4/3 5:41
【ニューヨーク=後藤達也】米連邦準備理事会(FRB)の総資産が1カ月で1兆6500億ドル(約176兆円)増えた。1カ月の増加額は過去最大だった2008年10月の2倍以上だ。金融市場の動揺を抑えるため、国債などを大量に購入。残高は日銀や欧州中央銀行(ECB)を抜いた。新型コロナウイルスによる経済の打撃を和らげようと、FRBは空前の規模の緩和を推し進めている。
FRBが2日公表した1日時点の総資産は5兆8116億ドルと、1週間で5573億ドル増えた。3月15日に臨時で決めた量的緩和の再開後に急増した。FRB国債や不動産ローン担保証券MBS)を連日で計1000億ドル購入している。国債などの金利が急騰して、金融システムや経済活動に打撃を与えるのを防ぐ狙いがある。1カ月の増加額がこれまで最高だったのは米リーマン・ブラザーズ破綻の翌月の08年10月。銀行間金利が急上昇し、国債などを担保に大量の資金を金融機関に供給し、1カ月で資産が7572億ドル増えた。08年以降の量的緩和でも資産の増加は月間1000億ドル前後で、今回の増加は突出している。日銀のピーク時の年間での資産購入額の2倍にも達する。大量の資産購入は当面続きそうだ。米議会は2兆ドルの経済対策を成立させたことで、今後米国債が大量に発行される可能性が高いためだ。国債の需給が緩めば金利が急上昇しかねない。市場では「経済や金融システムの打撃を防ぐため、国債の大量購入で金利を抑えるだろう」(米国野村証券の雨宮愛知氏)との声が多い。

FRBは金融機関に対して、短期資金の供給も拡大している。銀行や企業の間で短期資金を確保しようとする動きが強まり、金利に上昇圧力がかかっているためだ。FRB国債などを担保に翌日物の資金を大量に貸し出すことで、資金の目詰まりを防ごうとしている。世界でドルの需給が逼迫していることを受け、FRBは日銀など他の中央銀行と協調し、ドルを供給する仕組みも強化した。対日銀であれば、FRBと日銀がドルと円を交換し、日銀が日本の金融機関に対してドルを供給する仕組みだ。1日までの2週間でこの仕組みが3500億ドル近く利用され、FRBの資産拡大につながった。

 

FRB、企業に直接資金の異例策 社債購入・融資に4兆ドル

日経新聞 2020/3/28 22:30
【ワシントン=河浪武史】米議会で27日、2兆ドル(約220兆円)の大型経済対策が成立した。これを受け、米連邦準備理事会(FRB)は大企業など事業会社に直接資金を供給する緊急措置を発動する。経済対策には、FRBに最大4250億ドルの「政府保証」を付与する項目がある。FRBはこれを活用して、新たに4兆ドル規模の資金枠を確保する。大企業の社債の購入に加え、最長で4年のつなぎ融資も実行する方針だ。

金融システムの安定を責務とするFRBが、事業会社に資金供給するのは極めて異例だ。2008年の金融危機時に企業が短期資金を調達するために発行するコマーシャルペーパー(CP)の買い入れを発動したことがあるが、損失リスクのある社債の購入や直接融資には踏み込まなかった。新型コロナで企業の売上高が急減しており、中央銀行が直接支援する。今回成立した経済対策では、企業向けに8500億ドルの資金枠を設けた。3500億ドルは従業員500人未満の中小企業への融資に充て、雇用や給与支給を維持すれば返済を不要にする。大企業でも航空会社だけは連邦政府が580億ドルの資金枠をつくって直接、出融資を検討する。「国家安全保障の維持」という名目で170億ドルの政府資金も用意するが、米政権には航空機大手ボーイングの救済が念頭にある。ホテルチェーンや飲食業、小売業、製造業など新型コロナで打撃を受けたほかの企業は、FRBが資金支援する。FRBは事業会社に資金供給を担う特別目的事業体SPV)を設立。そこに財務省が最大4250億ドルを資本として注入する。

資本を元手に借り入れを活用する民間のファンドと同じ仕組みで、SPVを運営するFRBは資金供給額を拡大する。「4兆ドル規模になる」(ムニューシン財務長官)という新たな供給額の枠を活用して、社債購入や融資を実行する。仮に損失が10%分出ても、政府資金で補填できる仕組みだ。FRBは関連法で特定企業の支援を禁じられており、社債の購入や融資先の選定は外部に委託する可能性が高い。FRBは23日にも企業向けに資金供給する小規模な制度を立ち上げたが、実務は世界最大の運用会社、ブラックロックに委託した。事業会社への資金供給は「投資適格」の事業会社に限定し、期間も6カ月程度とする方向だ。

FRBは通常、民間銀行にしか貸し出しができないが、経済危機などの緊急時には、財務長官の承認を得れば事業会社や証券会社や、ファンドなどにも資金供給できる。第1弾として17日に企業が短期資金を調達するCPを購入する緊急措置を再発動した。18日にはMMFマネー・マーケット・ファンド)への資金供給も開始。今回の4兆ドル資金は地方債の購入などにも充てる方針だ。主要中銀では日銀も社債や上場投資信託ETF)などを購入対象としている。中銀は主に金融機関から資産を買い入れて金融システムを支えてきたが、事業会社に資金を直接供給する「産業金融」に踏み込みつつある。

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これで日米欧ともに中銀が国債など資産勘定600兆円規模でまた並んだ。財政も赤字問題を横において弱者のための緊急支援を優先、中銀も一線を越え事実上民間に直接融資せざるを得ない時代だ。コロナによる一過性ではなく、史的必然として資本主義は国家が信用創造・信用供与の中核とならざるをえない時代に入った。通貨の金本位を世界が正式に止めて半世紀、管理通貨に加え管理資金需給・管理財政、つまり、国家経済社会の健全性信用度(うまく回っているか・政策内容・透明性・民主制・市場合意制・腐敗のなさなど)が財政赤字や中銀資産拡大をどこまで許容されるかの形で、国家間で争われる時代だ。