6680.南シナ海で米中同時軍事演習

米中、南シナ海で大規模軍事演習 同時期は異例
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 7/4(土) 9:17配信

 米海軍は南シナ海に「ロナルド・レーガン」と「ニミッツ」の空母2隻を派遣し、近年では最大級となる演習を4日から実施する。周辺では中国軍も同時に演習を実施しており、南シナ海の実効支配を強める中国をけん制する狙いがある。通商問題や新型コロナウイルスの世界的大流行、中国による香港への統制強化を巡り、米中の間で緊張が高まる中、米当局者は中国による「違法な領有権の主張」に対抗する構えだ。ロナルド・レーガン空母打撃群の司令官を務めるジョージ・M・ウィコフ少将はインタビューで、「米国が地域の安全保障と安定に注力しているとの明確なメッセージを同盟国に示すことが目的だ」と話す。演習には空母2隻のほか、軍艦4隻も加わり、空母艦載機の攻撃力を試す連続飛行訓練も行われる。

 中国は近年、とりわけ南シナ海で軍事力を誇示する取り組みを強化している。ほぼ全域を自国の領土だと主張しており、同様に領有権を争う東南アジア諸国の主張を退けている。中国はミサイルを配備しているほか、人工島を建設して軍事施設を構築するなどして、米国やその同盟国が南シナ海で展開することを困難にしている。また、中国は1日から西沙(英語名パラセル)諸島近辺で演習を開始した。国営テレビによると、演習は5日まで行われる予定。中国は1974年、ベトナムから西沙諸島を奪い取った。

 米中が同じ地域で同時期に大規模な軍事演習を行うのは異例。

 ウィコフ少将は、演習の具体的な実施場所については明らかにしなかった。今回の演習は中国軍の演習に対する措置ではないとしながらも、中国が軍事的な支配を強めていることを踏まえると、米海軍のプレゼンスは正当化されると述べた。「それは非常に有益だと考えており、この地域におけるわが軍の作戦の正当性を立証するものだ」。米国が軍事力を誇示する背景には、新型コロナを克服した中国が周辺諸国・地域への圧力を強めていることがある。中国は台湾空域への戦闘機の派遣を増やしているほか、インドとはヒマラヤ山脈の国境付近で衝突。香港では「国家安全維持法」の施行を強行した。米当局者によると、中国は米国がコロナ対応に追われているのに乗じて、国際貿易の主要経路である南シナ海での活動を活発化させている可能性がある。

 オランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年、中国が南シナ海ほぼ全域の領有権を主張している問題で、主張に法的根拠はないとの判断を下した。だが、中国は判決を無視し、その後も周辺での軍事拠点化を進めている。

By Alastair Gale

 

米空母2隻が南シナ海で軍事演習-中国軍も同海域で演習
Soraya Permatasari ブルームバーグ 2020年7月5日 7:17 JST

米軍は「ロナルド・レーガン」と「ニミッツ」の空母2隻を軍事演習のため南シナ海に派遣した。南シナ海では中国も、1日から5日までの予定で軍事演習を行っている。 米海軍は電子メールで配布した声明で、演習は「自由で開かれたインド太平洋を支援するため、南シナ海の国際海域」で実施されると説明した。具体的な位置には言及していない。CNNは、領有権が争われている島々の付近で演習が行われることはないと伝えた。

  米国務省は2日、中国の軍事演習に対して「南シナ海の状況をさらに不安定にする」と懸念を表明。中国政府はこれに対し、中国と東南アジア諸国との間に不和の種をまこうとしていると間接的に米国を批判した。

原題:U.S. Sends Aircraft Carriers to Exercise in South China Sea (1)、U.S., Vietnam Protest Beijing’s South China Sea Military Drills(抜粋)

-------------------------------------------------------------------

米中軍隊間でプロトコール化している節がある。ちゃんと結果を出せない(少なくとも中国の覇権主義はいっこうに衰えない)自己満的示威行動は米国と自由世界の納税者への背信だ。これまでと同じ、ではだめだ。軍のあり方、情報公開、政治や人々による監視と管理を強く求める。

----------------------------------------------------------------------

続報)

中国、東シナ海でも軍事演習 3海域同時で影響力誇示
日経新聞 2020/7/5 20:35

【北京=羽田野主】中国国営中央テレビ(CCTV)は5日までに、人民解放軍南シナ海だけでなく東シナ海黄海でも軍事演習をしたと伝えた。3海域同時の演習は異例だ。米国との対立の深まりを受け、同海域での影響力を誇示する狙いがあるとみられる。

CCTV東シナ海を所管する東部戦区の海軍がミサイル駆逐艦を投入し、軍用ヘリコプター2機と連携して正体不明の船舶を拿捕(だほ)する様子を伝えた。台湾や沖縄県尖閣諸島(中国名・釣魚島)を意識している可能性がある。黄海を所管する北部戦区では護衛艦海上の目標に向かって実弾射撃訓練する場面を伝えた。南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島の海域でも1~5日まで船舶の航行を禁止し海上の射撃訓練をすると通告している。国営メディアは「三大戦区で大演習だ」と誇示した。中国の軍事関係筋は「米国やインドなどと緊張が高まり、国内で不安視する声が広がっている」と話す。

南シナ海では中国の演習と同時期に米軍が原子力空母2隻を派遣し、大規模な軍事演習を実施している。

米中が同時期にそれぞれ実施するのは異例で、同海域での緊張拡大が鮮明になった。中国としては対外的に強い態度を示して国内の不満をそらす狙いも透ける。

対米外交を巡っては6月に中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)中国共産党政治局員がハワイの米軍基地を訪れた。ポンペオ米国務長官との緊張緩和を巡る協議は平行線に終わったとみられている。中国の香港への統制を強める香港国家安全維持法の制定を受け、日米欧は反発を強めた。米上院本会議は7月2日、香港の自治の侵害に関わった中国共産党員や金融機関への制裁を可能にする「香港自治法案」を全会一致で可決した。自民党の外交部会などは3日、延期している習近平(シー・ジンピン)国家主席国賓来日を中止するよう政府に求める決議案をまとめた。

習指導部は中国で新型コロナウイルスのまん延がピークを越えた3月以降、海洋進出を活発化させてきた。海上保安庁は7月5日、尖閣周辺で4日に領海侵入した中国海警局の船2隻が5日夕まで領海内にとどまっていたと明らかにした。3日に記録した30時間17分を超え、2012年の尖閣国有化以降で最長を更新した。中国外務省の報道官らはオーストラリアやカナダなどに対しても挑発的な言動をする「戦狼外交」を繰り広げる。

北京の外交筋は「中国が緊張をつくり出し他国の反発を受けてさらに強硬になるという悪循環だ」と指摘する。

緊張高まる南シナ海 米軍が空母2隻を派遣
CNN.co.jp 7/7(火) 19:46配信

香港(CNN) 6年ぶりに米空母2隻が南シナ海に派遣された。紛争地域の大部分を独占しようとする中国を押し戻そうとする米政府が軍事力を誇示する最新の事例となった。米空母2隻が南シナ海に到着したのは、中国海軍が所有権争いの起きている諸島の近海での軍事演習を終えようとしているときだった。この明らかな共時性は中国の国営メディアにとっても明白で、国営メディアは、中国が自国の主張に対抗しようとする米国の全ての試みを撃退する準備が整っていると報じた。米海軍は声明で、空母「ニミッツ」と「ロナルド・レーガン」が防空能力の最大化と、艦載機からの長距離精密攻撃の射程の拡大を目的とした複数の軍事訓練を実施したと明らかにした。米空母2隻が南シナ海に派遣されたのは2014年以来初めてであり、2001年以降でみても2度目だという。米海軍は声明で、こうした演習について、国際法が許すところで飛行や航行、演習を行うという全ての国家の権利を擁護する米国のたゆまぬ関与を支持するものと述べた。米軍が独立記念日に兵力を誇示する一方、中国は南シナ海の西沙(パラセル)諸島近海で5日間にわたる軍事訓練を行った。同諸島についてはベトナムや台湾も領有権を主張している。中国は訓練の詳細を明らかにしていないが、環球時報に掲載された記事によれば、訓練は「集中的」なものだったという。

中国外務省は先ごろ、南シナ海での訓練について、主権の範囲内で合理的なものであると述べた。中国政府は約336万平方キロの南シナ海の大部分について領有権を主張している。中国はこの数年間でいくつかの諸島で軍事施設の建設を進めている。中国は昨年、南シナ海でミサイルの発射実験も行っている。中国の習近平(シーチンピン)国家主席は2015年、当時のオバマ米大統領に対して、島の要塞化は行わないと約束していた。米中間の関係が悪化するなか、米政府は南シナ海での演習を着実に増強している。米国は中国が実効支配する島の近くで「航行の自由」作戦を実施したほか、日本やシンガポールと合同演習も行っている。今回の空母2隻の派遣には60機以上の航空機やミサイル巡洋艦駆逐艦も同行しており、これはまるで、米政府は同地域におけるあらゆる影響力を中国政府に対して譲り渡すことはないと宣言しているかのようだ。一方、中国政府は米軍の存在について、地域の不安定化をもたらすと指摘。中国外務省広報官は「域外の一部の国が、大規模な軍事活動のために数千マイルも移動して南シナ海を訪れて、武力を誇示することは、南シナ海の安定に影響を与える根本的な理由である」と述べた。米太平洋軍統合情報センターの元責任者、カール・シュスター氏は空母を2隻派遣するのは、少なくとも今のところは、米海軍だけだという。中国が保有する稼働している空母は1隻のみで、2隻目の就役に向けて動いている。しかし、米空母2隻ほどの航空機の搭載能力はない。さらに2隻は、3隻目の空母「セオドア・ルーズベルト」とフィリピン海で演習を終えたばかりだった。シュスター氏は、中国軍と米軍との間にある軍事力の差は明白であり、中国や地域にとって、軍事的、地政学的なメッセージとなると指摘した。一方、中国は米空母について、「張り子のトラ」と指摘。中国政府は南シナ海での立ち位置を守るための十分以上の火力を保持しているとしている。