6662.原油1000万バレル減産で歴史的合意?

原油の「価格戦争」に幕 主要産油国が異例の協調減産

日経新聞デジタル 2020/4/13 11:34
【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアを中心とする石油輸出国機構OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は日本時間13日未明に開いた緊急テレビ会議で、日量970万バレルという異例の協調減産で最終合意したOPECプラスはこれをテコに、米国など枠外の産油国に、あわせて日量300万~500万バレルの負担を求める。新型コロナウイルスの感染拡大による経済の急ブレーキで世界の原油貯蔵能力が限界に近づくなか、主要な産油国が一転して協調に動き出した。協調減産は異例ずくめだ。過去のOPECOPECプラスの会合では日量200万~300万バレルの生産調整で激しく紛糾してきた。今回合意した減産は、ロシアやサウジの現在の生産量に匹敵するほどの破格の規模だ。サウジとロシアは3月の協議決裂後、あからさまに責任を押しつけ合う泥仕合を演じてきた。しかし新型コロナ危機による未曽有の需要減が、再び両国を生産同盟に引き戻した。サウジの国営石油会社サウジアラムコは13日にも、5月渡しの公式販売価格(OSP)を発表する予定だ。4月のOSPの大幅な値引きが火ぶたとなった「価格戦争」は幕引きとなる見通しだ。

サウジなどはOPECプラスの合意をテコに米国などから協力を引き出したい立場だ。すでにノルウェーやカナダは協力の可能性を示唆している。トランプ米大統領、ロシアのプーチン大統領、サウジのサルマン国王はOPECプラスの最終合意後に電話で協力を確認したもようだ。しかし、異例の減産協力をもってしても供給過剰を止めるのはむずかしい。足元では日量2000万~3000万バレルの供給過剰がある。新型コロナウイルスの感染力や致死率は、地域によって大きなばらつきがあり、危機がいつ収束するのか見通せない。グローバル経済の正常化が遅れれば、産油国は減産の強化を検討せざるを得なくなる。原油を貯蔵できるのは産油国が各地に持つ備蓄タンクやパイプライン、精製施設などだ。貯蔵の能力が限界を超えると、石油市場は深刻な危機に直面する。産油国やトレーダーは、コストをかけてチャーターした洋上のタンカーを貯蔵施設として利用せざるを得なくなる。採算割れとなる産油国は操業を停止するしかない。設備を無理に停止させると、油田の採掘可能年数が短くなるリスクがある。生産の再開にもコストが伴う。一部の産油国は、あふれた原油を引き取ってもらうため、業者に手数料を支払うことになる。原油の種類によっては価格が事実上のマイナスに転じる可能性がある。

産油国の結束には危うさがある。サウジは9日のOPECプラスで日量1000万バレルの減産を決め、翌日の10日に自身が議長を務める主要20カ国・地域(G20)エネルギー相会議で米国などの協力を引き出して、日量1500万バレルの実質減産を発表するシナリオを描いていた。しかしOPECプラス内部で、メキシコが合意を受け入れることを土壇場で拒否し、これがG20の議論にも影響した。原油安に備えてオプション契約を結んでいたメキシコは、備えを怠った他の産油国と同様に強いられるのは不当と訴えた。結局、全体の減産量を引き下げざるを得なかった。エネルギーの純輸入国が多いG20では、産油国の利益を前面に出した声明に消費国から懸念の声が出たもようだ。

 

原油価格4~5%上昇 OPECプラスの減産合意で

© Sputnik /2020年04月13日 15:25
13日、世界の原油価格は4%以上上昇している。石油輸出国機構OPEC)と非加盟国で構成する「OPECプラス」が、需要減に見舞われた世界の原油市場安定化のために減産で合意した。

WTI原油先物5月限の価格は4.92%高の1バレル=23.88ドル。

OPECプラスは12日、新たな減産を承認した。2018年10月の生産水準から、5~6月は日量23%(970万バレル)、2020年末までは日量18%(800万バレル)、2022年4月末までは日量14%(600万バレル)減産する。ロシアとサウジアラビアは、日量1100万バレルが基準となる。メキシコは個別の条件を主張し、5〜6月はわずか10万バレルの減産、減産不足分は米国が補う。IHSマークイットの副会長を務めるダニエル・ヤーギン氏は、ロイター通信に今回の合意について「世界の石油業界や国家、石油産業に依存する業界が極めて深刻な危機を回避することができた」と指摘している。

 

トランプ氏、OPECプラス減産合意「多数の米雇用救う」

日経デジタル 2020/4/13 6:09
【ワシントン=中村亮】トランプ米大統領は12日、石油輸出国機構OPEC)とロシアなどの主要産油国が参加する「OPECプラス」が原油の協調減産に最終合意したことについて「すべての当事者にとってすばらしいディールだ」とツイッターに書き込んで歓迎した。「米国で多数のエネルギー関連の雇用を救う」とも指摘し、原油価格の下落傾向に歯止めがかかることに期待を示した。

トランプ米大統領原油安が国内のシェールオイル生産業者の経営に打撃になると懸念を強めていた=ロイター
トランプ氏は12日、減産合意を主導したサウジアラビアムハンマド皇太子やロシアのプーチン大統領と電話し謝意を伝えた。トランプ氏は歴史的な原油安が米国内のシェールオイル生産業者の経営に打撃になるとの懸念を強め、3月後半から両国に対してOPECプラスの協調減産の復活を働きかけていた。

 

未曽有の減産合意。減産規模1000万バーレルは世界消費の1割、サウジ・ロシア・米国の各生産量に匹敵する。サウジ・ロシアに加えて米国・ノルウェー・カナダまで減産合意に参加する(らしい)のも史上初。他方で需要回復しつつある中国はすでに極めて安い価格と有利な条件で買いあさっているとの情報もある。

---------------------------------------------

続報)

原油安止まらず、迫る貯蔵の限界 減産合意1週間

日経デジタル 2020/4/19 17:45

【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアが主導する石油輸出国機構OPEC)とロシアなどOPECに加盟しない産油国が13日に日量970万バレルの協調減産で合意して一週間となる。新型コロナウイルスの感染拡大にともなう需要ショックは深刻で、足元では供給過剰が続いて原油安は止まっていない。世界の貯蔵施設は能力の限界に近づいている。

OPECプラスの合意を枠外の国が支援する動きが広がっている。米国やカナダ、ブラジル、ノルウェーは、あわせて日量360万バレルの減産に取り組む。中国やインドは余剰原油を買い取ることに同意したとされる。各国が約束を守れば日量1500万バレル以上という過去に例のない供給調整が実現する見通しだ。

それでも日量2000万~3000万バレルが消失したとみられる需要ショックの影響は大きい。国際指標の北海ブレント先物価格は最終合意の発表後、10%以上値を下げ、1バレル28ドル程度となっている。

OPECプラスの合意実行は5月1日からだ。それまでは各産油国が「価格戦争」に対応して増産・出荷した原油が次々と消費国に届けられる。このため高コストの生産者はいや応なく操業を停止せざるを得ない。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の貯蔵施設の「空き」は1月時点でおよそ12億バレル。供給過剰は日量1000万バレルを超えており、その分だけ貯蔵に回る原油が増えていく。今年半ばには能力の限界を迎えるおそれがある。供給調整の実現にも不安が残る。イラクやナイジェリアなどの原油収入への依存度が大きい国は減産への不満も大きいとみられる。OPECプラスの協議は土壇場でメキシコが反対し、決裂の瀬戸際に追い込まれた。わずかな結束のほころびが合意全体をくずしてしまうリスクを示している。米国やカナダが具体的にどんな形で供給調整に協力するのかもはっきりしていない。メキシコが免除された分の減産をトランプ米大統領は「肩代わりする」と述べたが、具体策は示されておらず、取り扱いは宙に浮く。OPECプラスは7月から減産幅を緩める方針だ。しかし、各国による新型コロナの抑え込みがこの時期までに成功しているという保証はない。再流行が起きれば、経済封鎖が多くの国が想定しているよりずっと長くなる恐れもある。企業は危機が去った後も、実験的に導入した在宅勤務やオンライン会議を続ける可能性がある。IEAのビロル事務局長は、日本経済新聞の取材に対し、新型コロナ危機で消費者の行動が変わり、エネルギー転換が加速する可能性を指摘した。