6673.MMTも第2波?!

新型コロナが引き起こす「MMTブーム」の第2波--パンデミック収束後の「新たな経済危機」とは

https://toyokeizai.net/articles/-/349653
中野 剛志 : 評論家 東洋経済オンライン 2020/06/01 6:20

昨年前半、消費増税前に盛り上がったMMT(現代貨幣理論)ブームが、コロナ危機により再び引き起こされている。昨年前半、アメリカから日本に上陸したMMT(現代貨幣理論)は、景気後退下での消費増税を目前にしていたこともあって大きな関心を呼び、論争を巻き起こした(と言っても、批判が大多数であったが)。拙著『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』を含むMMT関連本が立て続けに出版され、主唱者であるステファニー・ケルトン教授やビル・ミッチェル教授が来日した。これを、日本におけるMMTブームの「第1波」だとするならば、森永康平氏の『MMTが日本を救う』は、その「第2波」の到来を告げる書である。
MMTブームの「第1波」が消費増税と共に盛り上がったのに対し、「第2波」は、新型コロナウイルスによるパンデミック(「コロナ危機」)によって引き起こされている。

コロナ危機によって経済活動が全面的に停止したことで、1930年代の世界恐慌以来、最悪と言われるグローバルな大不況となった。これに対して、各国は、財政支出をかつてない規模で拡大せざるをえなくなった。わが国においても、例えば、一律10万円の給付金に象徴されるように、財政支出の拡大が求められた。

確かに、大規模な財政出動なくして、この危機を乗り切ることは不可能であることは、誰もがわかっている。しかし、大規模な財政支出を可能とする財源は、わが国のどこにあるというのか。もし、大規模な財政出動によって国民を困苦から救ったとしても、その結果として、国家財政が破綻してしまうのではないか。

こうした疑問から、財政政策に関する関心を高め、調べ始めた人々がいた。そこで彼らは、「財政赤字は、問題ではない」「日本は、財政危機ではない」と主張するMMTに触れたのである。

その結果、以前であれば、よく知ろうともせずに「ばかばかしい」と一蹴していたかもしれない人や、「経済は難しくてわからない」と敬遠していた人までもが、MMTについて真面目に受け止め、もっと知りたいと思うようになっている。それは、なぜか。言うまでもなく、このコロナ危機の中で財政赤字を拡大できるか否かに、われわれ国民の生死がかかっているからだ。

その意味で、MMT「第2波」は、「第1波」よりも大きなうねりとなりつつある。そのタイミングで投じられた森永康平氏の『MMTが日本を救う』は、この「第2波」をもっと大きな運動へと変えていく可能性を秘めている。

(後略)

MMTについてはそれが可能な原動力として国家の徴税権そのものなどと指摘するまでになっているが、いずれ、(管理通貨説同様に)ちゃんと管理される財政金融そのもの、安定した社会の信用創造力、が原動力と言われるようになるはずだ。もちろん近経的付加価値論(付加価値=GDP成長論や企業が生む利潤や労働が生む賃金に課税するから健全など)の見直しも必要だ。要は国家(社会)間で競争しその安定健全正義の実現の程度に応じ人々の合意に基づき国債市場でその規模や価格等を決まっていく。そういう形に進んでいくはずだ。今後のMMT学者等一層の奮闘に期待する。