6678.中国、香港に国家安全法即日施行

香港で国家安全法施行 中国に「重大」事件の管轄権
AFPBB 2020年7月1日 3:50 発信地:香港/中国

【7月1日 AFP】中国は6月30日、香港に対する支配を大幅に強める国家安全維持法を施行した。同日夜に公表された同法の全文によると、中国政府は香港での国家安全保障をめぐる「非常に重大な」犯罪の管轄権を持つようになり、最高刑は終身刑となる。同法はまた、中国政府が香港に国家安全維持機関を設立する権限を付与。この機関の職員は、香港の法律に拘束されることなく任務を遂行できる

 一連の新たな権限は中国と香港の関係を根底から作り変え、香港の独立した司法と、共産党が統制する本土の裁判所との間にあった法的な防壁を打ち破るものとなる。同法は、国家の分裂、政府の転覆、テロ活動、国家安全に危害を加えるための外国勢力との結託の4つを禁止。香港政府や新設される機関の要請に基づき中国本土が訴追手続きを引き継げる事案として、外国が関与する複雑な事案、「非常に重大な」事案、国の安全が「重大かつ現実的な脅威」に直面した場合の3つを規定した。(c)AFP

 

【解説】 中国の「香港国家安全維持法」 香港市民が恐れるのは
BBCニュース 2020年06月30日

中国の全国人民代表大会全人代、国会に相当)常務委員会は30日、全会一致で「香港国家安全維持法案」を可決した。中国政府は同法を通じて、香港での反政府的な活動を犯罪として取り締まる考えで、香港独自の自由が失われる懸念が出ている。

◆香港市民が恐れていることとは何なのか?

香港ではもともと、治安維持の法律整備が想定されていたが、あまりに住民の反対が強く、自治政府は成立にこぎつけることができなかった。国家安全維持法は、中国政府が国家権力に対する深刻な挑戦とみなす動きに対応できるよう、香港において必要な法的枠組みを確立するためのものだ。

この法律では、以下の4つが犯罪行為となることが分かっている。

分離独立:国家からの離脱
反政府:中央政府の権力・権限を揺るがす行い
テロリズム:暴力や威圧行動
香港に介入する外国勢力との結託
◆香港にはどんな影響が?
現時点で分かっている内容は以下の通り。

中国政府は香港に独自の治安機関を設置する。この機関は情報収集とともに国家安全保障を脅かす「犯罪を取り締まる」という。また、一部の事件は香港以外の場所で裁判にかけることもできるという。中国政府は、こうした権限は「ごく一部の」事件にしか適用されないとしている
香港はこの法律を施行するために独自の安全保障委員会を設置し、中国政府が任命した顧問を起用する
安全保障に関わる事件の裁判については、香港の行政長官が裁判官を指名できる。この条項によって司法の独立が損なわれるという懸念が出ている
法案を策定した委員会に唯一参加した香港の代表によると、安全保障に関わる犯罪で有罪となった場合、5~10年の禁錮刑が科せられる予定。一方、香港行政会議筋によると、終身刑が科せられる可能性もあるという
この法律の解釈は香港の司法・行政機関ではなく、中国政府に委ねられる。香港の既存法と矛盾が生じた場合、国家安全法が優先される

◆香港市民の恐れていることとは
中国政府は、香港は国家安全保障を守りながら権利や自由を尊重・擁護すべきだとしている。しかし多くの市民は、国家安全維持法によって香港の自由が失われてしまうことを恐れている。香港大学の陳文敏教授(法学)は、「この法律が香港市民の表現の自由に深刻な影響を与えることは明らかだ」と指摘している。すでに多くの市民がフェイスブックの投稿を消去しているという。国家安全維持法に反対してきた政治家が、今後は選挙に立候補できなくなる可能性もある。また、この法律によって香港の司法システムが中国のものに急激に近づくため、司法の独立が損なわれる恐れがあるという。「これは事実上、香港のコモン・ローのシステムに、中華人民共和国の刑法を適用しようとしており、誰がどちらの法で裁かれるかが全くの自由裁量になってしまう」と陳教授は説明する。

香港の民主化運動のリーダーとして著名な黄之鋒(ウォン・ジーフン、英語名ジョシュア・ウォン)氏などは、外国政府へのロビー活動も行っているが、こうした活動も今後は犯罪となる可能性がある。多くの人が、この法律が遡及法となることを心配している。さらに、こうした香港の自由に対する脅威が、ビジネスや経済の中心地としての香港の訴求力にも影響を与えるという懸念も出ている。

◆中国はなぜ国家安全維持法を可決したのか
香港は1997年にイギリスから中国に返還されたが、その際に香港の憲法ともいえる香港特別行政区基本法」と「一国二制度」という独自のシステムが取り入れられた。これにより香港では、中国のその他の地域では認められていない集会の自由や表現の自由、独立した司法、一部の民主的権利などが保護された。一方で基本法には治安維持の法律整備も定められているものの、あまりに住民の反対が強く、自治政府は成立にこぎつけることができていない。

 

◆中国政府はこの法律を強行できるのか
それが今、正に起きようとしていることだ。香港の基本法によると、香港で適用される中国の法律は「第3付属書」に書かれているものに限られる。すでにいくつかの法律が名を連ねているが、ほとんどが論争の起きるものではなく、外交方針についてのものだ。こうした法律は中国政府からの布告という形で制定されるため、香港の議会を通す必要がない。こうしたシステムは、香港が重要視している「一国二制度」を侵害しているものだとの批判もある。

取材:グレース・ツォイ、ラム・チョウ・ワイ(BBC)

(英語記事 China's new law: Why is Hong Kong worried?)

--------------------------------------------------------------

国家などよりひとりひとりの人間、という21世紀この時代に、中国政府はおそるべき時代錯誤を断行する。少しでも手を緩めれば体制崩壊するという恐怖感が消えないのだ。同法、全人代を満場一致で通ったとか、お里が知れる。